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よもやま話(その2)

4時間の結婚披露宴ってどんなの? 


筆者はホテルを退職後に長年結婚式の印刷物を作ってきたのですが、その中で400名を超える大規模披露宴に3回関わることがありました。内2回はいずれも企業の社長さんの結婚披露宴で、出席者の大多数は同業あるいは取引関連の方と思われる方々でした。他には会社の従業員さんや馴染みのバーのマスターなどのゲストもいらっしゃいました。残りの1回は仏教関係の方で、出席されるゲストは同じ宗派のお寺のご住職と見受けられましたが、こんなにたくさんのお坊さんが一同に会するのはなかなか見れないことだと思われます。
 
さて、筆者が現役のホテルマンの頃の大規模披露宴のお話しです。筆者が勤めるホテルで400名を超える披露宴がありました。実はこの時の新郎は同じホテルに勤める筆者の後輩でした。それなら特に変わったことでもないのですが、この時新郎の妹さんも一緒に披露宴を行うことになったのです。2組の新郎新婦がメインテーブルに座った姿を見たことはありますか?なかなか見ることの無い光景でしょう。
しかもこの兄妹の父親が市役所の偉い方で、役所内は言うに及ばず、市議会、県議会の議員さんまで多数出席されていたのです。披露宴が始まる前から少し嫌な予感があったのですが筆者もご招待を受けて披露宴に参加しました。
 
まず新郎新婦が羽織袴に色内掛けの豪華な衣裳で入場してきました。2組の新郎新婦の同時入場は壮観で、会場は万来の拍手です。
さて問題はその後です。
新郎新婦が着席すると次は主賓の祝辞が始まります。そしてその時の主賓が県議会議員で演説上手の〇〇氏だったので、筆者と一緒に披露宴に同席したホテルの同僚は互いに顔を見合わせてしまいました。それと言うのも筆者が勤めていたホテルではその〇〇議員は長話しで有名だったのです。
そして〇〇議員の祝辞が始まると筆者の予感は的中してしまいました。通常は主賓の祝辞は5分~6分が常識なのですが、5分経っても10分経っても〇〇議員の祝辞は終わりそうにありません。話はあちらに行ったかと思えばこちらに戻って、いったい何時になったら終わるのか。話が始まってから30分後、皆さんが聞きくたびれてやっと〇〇議員の祝辞が終わったのです。しかしそれで挨拶が終わったわけではありません。次の主賓は10分、その次の祝辞は10分、さらに次の祝辞も10分。合計4名の主賓祝辞が終わったのは開宴から1時間が過ぎたころでした。目の前には美味しそうな料理が並んでいたのですが、1時間以上もおあずけです。
 
こんな調子で400名の大宴会は続いていくのですが、色々な演出や余興が続いてお色直しへと向かっていきます。新郎新婦がお色直しに中座する頃になると、お酒も十分に行き渡って席を立ってお酌に回る人、会場を出て外でタバコを吸う人、あっちでグループができ、こちらで別に小宴会が始まったり、もうグチャグチャで司会者が何を言っても誰も聞こうとしていません。
 
開宴から3時間30分以上が過ぎて、筆者たちも一度廻った酔いがすっかり醒めて、もう一度飲み直そうとしたその時、会場に音楽が流れ始め、一人の男性がステージ上に現れました。右手にマイクを持ち、左手には1~2歳くらいの幼い子供を抱えて。そして静かに名曲「マイウェイ」を歌い始めたのです。
張りのあるテノールの声はゆっくりとしかし力強く会場に流れていきました。その声の素晴らしいこと。会場は一瞬で静かになり、人々はグラスを持ったままステージの男性を見ています。筆者はプロ歌手ではないかと思いましたが、この男性は黒色の礼服を着ていましたので、新郎又は新婦の親戚の人と思われます。
 
そして歌が終わると会場割れんばかりの大拍手です。グチャグチャの宴会が一瞬で元の結婚披露宴に戻った気がしました。
そしてこの後新郎新婦のキャンドルサービスへと続くのですが、この400名、4時間の披露宴は「マイウェイ」のおかげで無事に終了することが出来たといっても過言ではないでしょう。黒服のテノールさんには感謝したいと今でも思います。
 
笑い話のような筆者の実体験ですが、こんな披露宴もあるというお話しでした。