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婚礼料理の組み立て方を知っておこう

 
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婚礼費用の中でも最大の費用である「料理」。式場は、さらに高単価の料理にランクアップするように仕掛けてきます。婚礼料理の組み立て方に込められたランクアップを誘導する仕掛けを知っておくと、式場側の言うままに選択するのではなく、適切な料金で美味しい料理を選択できるようになります。
 

 目 次

 
1.見せ筋、売れ筋、儲け筋という婚礼料理の構成
2.いつの間にか料理のランクアップをしてしまう理由
3.婚礼料理を選択する上での注意点
4.婚礼料理の多様化とねらい
5.婚礼料理の料理別選択状況
6.新しい婚礼料理は「卓盛り料理」がお薦め
7.まとめ
 


 

見せ筋、売れ筋、儲け筋という婚礼料理の構成

 
いきなりですが、皆さんは「見せ筋、売れ筋、儲け筋」という言葉を聞いたことがありますか?スーパーなどの物品販売の業種では良く聞く言葉だと思いますが、一般には余り知られていませんのでご存知無い方も多いでしょう。
「見せ筋」というのはバーゲン品のように低価格でチラシなどに掲載されるいわゆる「客寄せ商品」のことです。「売れ筋」は最も良く売れる商品で、定番商品とでも言いましょうか。「儲け筋」はそれほど沢山は売れないけど、利幅が大きいので売れると沢山の利益が出る商品のことです。
筆者がホテル総支配人の頃、この「見せ筋、売れ筋、儲け筋」の考えで婚礼料理を作るように指導していました。どういうことでしょうか?
 
(注意)以下に表示する料理価格は筆者の現役時代の金額です。現在では3,000円~5,000円程度価格が上っていると思われます。
 
まず「見せ筋」は最も低価格の婚礼料理で、パッと見た時は少しみすぼらしく見えるようにわざと作ります。大体8,000円(税別)くらいの価格設定です。原価率(原材料)も宴会料理の最低原価(20%~22%)で設定します。
次に「売れ筋」は概ね11,000円(税別)くらいの価格設定で「見せ筋」の料理と比べてはっきりと違いが分かるように、原価率も標準原価率(25%)まで上げて飾り付けも綺麗にして作ります。この料理が一番売れるようにするのです。
最後に「儲け筋」です。「儲け筋」の料理は価格を13,000円(税別)に設定します。
そして原価率は通常の原価率(25%)で設定して、特にメイン料理に原価をかけるようにしています。メイン料理以外は「売れ筋」と内容の違いはあっても原価的には余り変りありません。
まとめると以下のようになります。
 
見せ筋の婚礼料理  8,000円(原価率も低く見栄えが余り良くない)
              1ランクアップすると3,000円の料金アップ
売れ筋の婚礼料理 11,000円(原価率は標準で見せ筋との違いをハッキリさせる)
              1ランクアップすると2,000円の料金アップ
儲け筋の婚礼料理 13,000円(原価率は標準でメイン料理を豪華にする)
 
さあ、この婚礼料理の中であなたはどの料理を選びますか?
筆者の経験では「見せ筋」が選ばれる割合は5%、「売れ筋」が75%、「儲け筋」の婚礼料理は20%位になると思います。
 

いつの間にか料理のランクアップをしてしまう理由

 
実はこれらの婚礼料理にはハッキリとした販売意図が込められています。
 

  1. 低価格の「見せ筋」料理は見栄えが良くないようにして、1ランク上の料理との差がハッキリ分かるようにしているため、両者を見比べるとその違いは一目瞭然です。そのため3,000円という高額の料金アップも抵抗無く受け入れていただけます。 
  2. 次に「売れ筋」と「儲け筋」の料金の違いは2,000円です。先ほどの「見せ筋」と「売れ筋」の料金の差額3,000円より小さくなっています。もう少しだけ奮発していただければ最高の料理に手が届く、という風に料金設定してあります。内容的には特にメイン料理の違いを際立たせているため、かなりの数のお客様がさらにランクアップをされるのです。

 
同じ料理人が作るのですから味付けに違いはありません。食材の違いは有りますが、3,000円の料金差を生むような違いではありません。あくまで見た目の違いを際立たせる料理の作り方と巧妙に仕組まれた料金設定で、お客様はいつの間にか料金アップを受け入れてくれるのです。
 
さらに一番安い「見せ筋」料理にはもう一つの役割があります。それはオフシーズンに販売する「夏の婚礼パック(サマーパック)」に組み込むということです。しかも時と場合によっては料理をさらにランクダウンして、10品の料理から1品減らして9品の料理でパックに組み込まれます。この料理は衣裳やその他のアイテムと一緒になって大きな「見せ筋」婚礼商品パックになっていくのです。
 

婚礼料理を選択する上での注意点

 
これらの話はそれ自体が「節約術」になる訳ではありませんが、料理の組み立て方を知っておくと「メイン料理」だけをランクアップさせるだけで料理が豪華になる、という理由をお分かりいただけると思いますし、実行されると少しでも節約になるのではないかと思います。
 
最後に一つだけ付け加えると、婚礼料理は料金の高低はありますが同じ料理人が作るので安いから不味いということはありません。味付けがしっかり出来ている料理人であれば、最低ランクの婚礼料理でも美味しくいただけますのでご安心下さい。逆に下手な料理人が作る料理はどんなに高額な料理でも不味いのです。だからしっかり試食をして確かめるようにして下さい。
 

婚礼料理の多様化とねらい

 
今までは婚礼料理の「見せ筋、売れ筋、儲け筋」というお話しをしました。ですが婚礼料理の組み立て方はそれだけではありません。
次に式場が仕掛ける「婚礼料理の多様化アイテム」についてお話ししましょう。
 
現在の婚礼料理は多様化していて、色々な国の料理や創作料理などが楽しめるようになってきました。しかし筆者が現役のホテルマンの頃は和食、洋食、和洋折衷の3パターンだけしか無く、しかも洋食と言ってもフランス料理はあるもののイタリア料理やその他の西洋料理はマイナーで殆ど市中でも見かけることはありませんでした。
その頃に筆者が企画した婚礼料理は以下のような内容でした。
 
表29

 
一般的な結婚式場の実際の営業では、本記事の先頭にてお話ししました「見せ筋」「売れ筋」「儲け筋」の考えを日本料理、和洋折衷料理、フランス料理に広げて全体の婚礼料理を制作しています。
筆者がホテル勤務時代に最も販売に力を入れ、結果的に最も高い販売シェアを獲得したのは「売れ筋」の「和洋折衷料理」です。婚礼料理全体の約65%のシェアであったと記憶しています。その次にお客様のリクエストが多かったのは「売れ筋」の「和食」で全体の約10%、その次の3位は「儲け筋」の「和洋折衷料理」で全体の7~8%ほどで、続く4位は「儲け筋」の「和食」でした。フランス料理は当時は婚礼料理メニューには入っていますが、ほとんどお客様に選ばれることはありませんでした。
 
「売れ筋」の「和洋折衷料理」が最も高い支持を得たのは先にお話しした仕掛けが効いていたからです。具体的には
  1. 「見せ筋」料理との見た目の差異をはっきりさせる。
  2. 見栄っ張りの日本人は最低ランクではなく、「真ん中」の料金帯を選択する傾向にある。
  3. 「和洋折衷料理」は和食の他にステーキが入っているので、年配者にも若い人にも喜ばれる、というセールストークで納得させます。

 
また「儲け筋」の「和食」「和洋折衷料理」が合わせて約15%というのも、「もう少しだけ料金アップすれば最高の料理をゲストに提供できます」という料理構成の仕掛けが利いている証でした。
 

婚礼料理の料理別選択状況

 
なお、当時はフレンチレストランの数が少なかったこととウェディングハウス(邸宅型結婚式場)がまだ出来ていなかったため、フランス料理の実績は殆どありませんでした。
しかし、洋風のウェディングハウスが出来てきたり、ウェディングドレスが女性の憧れになってきたりして徐々に婚礼料理の地位を獲得し、現在では全国の半数以上の婚礼でフランス料理が選ばれるようになりました。以下に婚礼料理の最新の選択状況についてデータを表示します。
 
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ご覧のように全国平均で52%強がフランス料理を選んでいます。特に首都圏や東海地区、関西地区の大都市圏ではフランス料理の比率が高くなっています。一方で日本料理や和洋折衷料理は東北、北陸や九州、四国でフランス料理と同等かそれに近いシェアーとなっています。今後はフランス料理が地方に広がっていくのか、あるいは和食、和洋折衷が復権を果たすのか、どちらに転んでもさらに美味しい婚礼料理が普及していって欲しいものですね。
 

新しい婚礼料理は「卓盛り料理」がお薦め

 
実は筆者は上記の統計には表れていない「新しい婚礼料理」が出てきて欲しいと思っています。その理由は、現在の主流であるフランス料理や日本料理などの「コース料理」と呼ばれる婚礼料理は温度管理がなかなか難しくて、折角料理人が心を込めて作った料理なのに本当の美味しさをお客様に提供できていないのではないかと考えているからです。
 
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表31

 
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上記の表には入っていませんが、筆者が推奨しているのは「卓盛り料理」と言われる料理形態です。「卓盛り料理」については「婚礼料理の内容と提供スタイル」の章で詳しくお話ししていますが、温かい料理を温かく提供できるのでゲストにとっては美味しい料理を楽しめる一番の方法ではないかと思っています。
 
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また「卓盛り料理」方式は和食やフランス料理、中華料理、イタリア料理などをミックスした構成が可能ですので、とても日本人向きの婚礼料理になるのではないかと期待しています。
さらに、現在は65名前後の婚礼の平均ゲスト数がさらに減少して50名前後の平均ゲスト数になるだろうということ、そして、婚礼費用が年々上昇するのにご祝儀の金額は3万円で頭打ちになり、新郎新婦の自己負担額がますます増えていくと思われます。
そうした中で結婚披露宴も少し簡略化した1 .5次会などがさらに普及して、今までのように高いだけの婚礼料理は次第に敬遠されるのではないかと思っているのです。
 
そういう状況では比較的にリーズナブルな料金で品数も多く、温かい料理を温かく提供できる「卓盛り料理」は最適ではないでしょうか。
これからの婚礼料理は「品数、温かい料理、そしてリーズナブル」がキーワードであるように思います。
 

まとめ

 

  1. 婚礼料理は「見せ筋」「売れ筋」「儲け筋」という3ランクの料理で構成されている。
  2. 各ランクの料理は、1ランク上の料理との差がハッキリ分かるように、見た目や原価率などに差が設けてある。
  3. 婚礼料理は料金の高低はあるが同じ料理人が作るため、安いから不味いということは無い。逆に、下手な料理人が作る料理はどんな高額な料理でも不味い。しっかり試食して確かめましょう。
  4. 「見せ筋」「売れ筋」「儲け筋」の考えは日本料理だけでなく、フランス料理や和洋折衷料理でも適用されている。
  5. 婚礼料理として全国的に最も選ばれているのはフランス料理。地域によっては日本料理や和洋折衷料理も同等に選ばれている。
  6. 「コース料理」が全盛だが、比較的リーズナブルな料金で品数も多く、温かい料理を温かい状態で提供できる「卓盛り料理」が筆者はお薦めです。