美味しい料理の見極め方を知る

結婚式・披露宴でゲストをもてなすのに美味しい料理は欠かせません。婚礼料理は価格も高いので美味しいのが当たり前と思われるかもしれませんが、価格が高い料理だから美味しいとは限りません。料理の基本「原価」の重要性と、意外と知らない「美味しい料理の見極め方」を解説します。
目 次
1.美味しい料理は何で決まるのでしょう
2.原材料のお話し
3.原材料費が高いと料理は美味しいのか?
4.高級でなくても記憶に残る美味しい料理はある
5.結婚式場の温度管理の現状
6.まとめ
美味しい料理は何で決まるのでしょう
皆さんはどんな料理を美味しいと感じますか?美味しいかどうかというのは食べる人の主観によるのですが、一般的に以下の要因で決まると言われています。
・原材料の新鮮さと素材が持つ味わい
・原材料の原価率
・食材・料理の温度管理
・料理の盛り付け(見た目の美しさ)
・調味料の使い方や焼き加減、揚げ加減などを総合した料理人の腕前
料理は材料の良し悪しによって変わってきますし、同じ材料でも調理をする人によって全く違う味わいになってしまいます。まず料理の基本である「原材料」について見てみましょう。
原材料のお話し
家庭で料理を作るのと違って結婚式場やレストランで料理を作る場合、調理をする人には一定の「原材料比率」(通常は原価率といいます)で作るように決められています。日本では飲食店の原価率は20%~35%の範囲内に収めるのが一般的で、定められた原価率の中でいかに美味しい料理を作るかが料理人の腕前と言われています。
一方で人間の食べる量には一定の限界があるため、原価が高いということは高い材料または高級な食材を使うということになります。しかしながら当然のことで、高価な原材料を使うと料理価格も上ってしまいます。
以下に一般的な業態別の原価率と原価金額を示してみます。

上記の表によるとレストランが一番原価率が高く、宴会料理は原価率が低いということが分かります。これはレストランは少人数対応で宴会料理は大人数対応という違いがあるからです。大人数対応の場合は食材を大量に一括仕入れることでコストの低減をはかり、さらに1人の料理人が作る料理の量が多いため相対的に料理人1人当りの生産性が上ることになります。
婚礼料理も宴会料理の一種ですが原価率は若干上っています。同じ宴会でも婚礼料理の場合は料理内容に高級感が求められます。そのため高級食材を使い、尚かつ手間をかけて装飾なども施すために宴会料理よりも原価率が上ってしまいます。もちろん必然的に料理価格も上るということになります。
原材料費が高いと料理は美味しいのか?
一般的に「原材料が高いと料理の販売価格は高い」というのは真実ですが、「料理の販売価格が高いとその料理は美味しい」と言うのは間違いです。
過去にいくつもの披露宴に出席した経験からして、召し上がった婚礼料理を美味しいと思った方がどれほどいたでしょうか?案外「美味しいと思ったことは少ない」と応える方が多いのが現実です。実際は美味しくなかったけど、ご招待を受けていったのだから文句は言えない、と思っていらっしゃる方もいるでしょう。
ここで良く聞く高級食材の例を挙げてみます。
(キャビア)
これは世界3大珍味と言われるものの一つで、価格は以下のとおりです。
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25g 3,750円(輸入キャビアの場合)
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20g 10,800円(国産キャビアの場合)
25gというと計量スプーンの大さじ1杯(山盛り)くらいでしょうか。それで3,750円って高いと思いませんか。もしもこれを婚礼料理の食材に加えていたら原材料費の半分以上を占めてしまいます。キャビアだけでは料理になりませんので、他の食材は品質を落としたり、ずっと安いものにする必要がありますから全体的には原材料の質が下がって美味しい料理は出来ないでしょう。
いかがですか?高級原材料だからといって美味しい料理を作れるわけではないのです。ちなみにキャビアには「ランプフィッシュキャビア」という代用品があって、こちらは150gで1,930円、25gだと約320円ほどになります。見た目は殆ど本物と一緒で、味も変わりません。多分皆さんが召し上がるキャビアはこの「ランプフィッシュキャビア」であろうと思われます。
※そもそも「キャビア」とは魚卵のことですから、キャビアといって「ランプフィッシュキャビア」を出されても間違いではありません。
同じように「トリュフ」「フォアグラ」の価格も参考の為に示しておきたいと思います。
(トリュフ)
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50g 21,000円(黒トリュフ)
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30g 49,800円(白トリュフ)
(フォアグラ)
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50g 565円(ハンガリー産)
日本では高級食材として牛肉の価格が良く知られています。日本の牛肉は厳格にランク分けされていて、100g当たり数千円もするA5ランクの牛肉もあります。こちらの場合は価格に応じて美味しさにも差があり、やはり高い牛肉ほど美味しいということは皆さんも良くご存知でしょう。
これらのことから「原材料費(原価率)だけでは料理の良し悪しは判断できない」あるいは「料理の価格だけでは美味しい料理だと判断は出来ない」ということを理解していただきたいと思います。
高級でなくても記憶に残る美味しい料理はある
1万円も2万円もする料理でなくても、一般的な料金で美味しいと思われる料理は日本にはたくさんあります。皆さんが外食をする時、今までで「美味しい」と思ったのはどんな時でしたか?「美味しい」と思った料理に出会えたのは、多分「町の食堂」や「レストラン」等ではないでしょうか?
「てんぷら料理」のお店を想像していただくと直ぐにご理解いただけるでしょう。目の前のカウンターで揚げて直ぐに提供されるてんぷらは、少し時間を置いて提供されるてんぷらと比べて明らかに美味しいのです。
このように、小さな食堂やレストランなのにお客様に美味しいと評価してもらえるのは、素材の新鮮さと料理人の腕前だと思いますが、決定的に重要なのは「出来たての料理をすぐに提供する」ことにあると思います。つまり「温かい料理は温かい状態で、冷たい料理は冷たい状態で提供する」(温度管理と言います)ことが、美味しい料理に欠かせない条件になります。
結婚式場の温度管理の現状
それでは結婚式場の温度管理の現状はどうなっているでしょうか。
筆者がいたホテルでは「冷たい料理」を保冷するために「業務用クーラー(冷蔵庫)」が宴会場の直ぐそばに設置されていて、調理盛り付けが終わった料理は皿ごとこのクーラーで保冷保管していました。乾燥を防ぐためにラップを掛けていましたし、保冷する時間もせいぜい1時間~2時間程度でしたので、例えば「刺身」などの料理は適度に冷えた状態でお客様に提供することが出来たのです。
一方「温かい料理」は「業務用ウォーマー」と言われる設備がありました。文字通り温める(保温する)設備で、出来上がった温かい料理を入れて保温保管します。但し、このウォーマーには問題がありました。皿ごと保温保管するので出すときには皿が熱くて触れないとか、保温した野菜がしんなりしてしまって、食感が変わってしまうなどの問題が出てしまうのです。これらの問題に対処するためには保温保管する時間はせいぜい10分~15分くらいにする必要があります。
しかし、大人数の宴会や婚礼で「1人ずつ召し上がるコース料理」を提供する場合は、食事のスピードが人によって異なるという現実があります。ある人はオードブルを食べ終わったのに別の人は半分しか食べ終わっていない。そんな時に次の「温かいスープ」はどのタイミングで出せば良いのでしょうか?
こんな状況から大人数の宴会(婚礼)では「温かい料理は温かい状態で提供する」ことがなかなか難しいということがお分かりいただけると思います。
ホテルに限らず結婚式場は同じ悩みを抱えていますが、残安ながら完全な解決はまだ出来ていないのが現状です。だから婚礼料理には本当に美味しいと思えることが少ないのでしょう。
それでは婚礼料理で「温かい料理を温かい状態で、冷たい料理を冷たい状態で」提供することは出来ないのでしょうか?
いいえ、料理の提供スタイルを変えることで解決することが出来ます。それは「卓盛り方式」の料理を提供することです。
関連記事:結婚式場の選び方|客層に合わせて料理スタイルを選択する
まとめ
- 美味しい料理の要因は、原材料の新鮮さと素材が持つ味わい、原価率、温度管理、料理の見た目、味付け・火加減などの料理人の腕前。
- 業種・業態によって料理の原価率は決まっていて、定められた原価率でいかに美味しい料理を作るかは料理人の腕前次第。
- 婚礼料理の原価率は25%~30%が一般的。但し、それ以下の場合もある。
- 人間の食べる量には限界があるから、原価が高いということは高い材料または高級な食材を使うということ。高価な原材料を使うと料理価格も上る。
- 高い料理だから美味しいとは限らない。小さなレストランや名も無い食堂でも至極の料理はある。
- 「温かい料理は温かく。冷たい料理は冷たく」は美味しい料理提供の基本。少人数なら可能だが大人数のコース料理では難しい。