美味しい料理は何で決まる?

結婚式・披露宴でゲストをもてなすのに美味しい料理は欠かせません。婚礼料理は価格も高いので美味しいのが当たり前と思われるかもしれませんが、価格が高い料理だから美味しいとは限りません。結婚式・披露宴でタブーとされる「婚礼料理の費用節約」につながる料理の基本「原価」の重要性と、意外と知らない調理師の裏側から考える「美味しい料理の見極め方」を解説します。
目 次
- 婚礼費用の中でダントツに多い「料理・飲み物の費用」
- 原材料費のお話し
- 安くても記憶に残る美味しい料理はある
- 美味しい料理の絶対条件は「温度管理」にある
- まとめ
たろうくん・はなちゃん
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GMおじさん、こんにちは!
GMおじさん
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おや、二人ともいらっしゃい。
はなちゃん・たろうくん
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おじさん、今日も色々教えてくださいね。楽しみにしています。
GMおじさん
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はいはい、きっと役に立つと思うから聞いていってね。
はなちゃん
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おじさん、今日は何のお話ですか?
結婚費用の中でダントツに多い「料理・飲み物の費用」
GMおじさん
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今日は「美味しい料理は何で決まる?」というテーマで、料理と飲み物とは切っても切れない「原価率と温度管理」についての話しですよ。参考のために下の表をみてごらん。「料理と飲み物」は婚礼の中でも費用がダントツに多いだろう。

なはちゃん・たろうくん
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ほんと!すごい金額だわ。
GMおじさん
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一人当りの料理単価が1,000円下がると、60名の披露宴では全体で6万円、料理単価が2,000円下がると12万円も下がるんだよ。大きいよね。だからこの「料理と飲み物」は節約の重要ポイントなんだ。だけど結婚ガイドブックなどでは「料理はゲストの心象を左右するから節約はしないほうがよい」などと書かれている。長年婚礼に関わってきたおじさんからすると、料理の見た目と価格だけで「美味しい」と決めてしまうのは間違っているし、婚礼料理には節約しても十二分にゲストを満足させる方法があるんだ。
はなちゃん
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でも料理単価が下がると料理がまずくなるんじゃないかしら?
GMおじさん
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必ずしもそうとは言えないよ。価格が高いから美味しいとか価格が安いからまずいと言うのは、完全に間違った見方だよ。それじゃ、「美味しい婚礼料理は何で決まるか」を勉強することにしましょう。
原材料費のお話し
GMおじさん
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ところで料理を作る調理師には会社から、あるいは上司から定められた原価率(原材料率)というのがあって、その範囲内で料理を作るんだ。以下に一般的な業態別の原価率と原価金額を示してみたから見てごらん。

GMおじさん
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飲食店の業態によって若干の違いはあるけど、飲食店の原価率は20%~35%の範囲内に収めるのが一般的で、定められた原価率の中でいかに美味しい料理を作るかが料理人の腕前と言われるんだよ。
はなちゃん
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この表で見るとレストランが一番原価率が高いのね。宴会料理は原価率が低いわ。婚礼料理は若干原価率が上るのね。
GMおじさん
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おっしゃる通り。婚礼料理の原価率は25%~30%が一般的だけど、施設によっては一般宴会料理に近い20%~25%というところもあるんだよ。だけど原価率は低いけど、原価の金額は高いよね。
はなちゃん
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すご~い。こんなに原材料費が高いということは、いい食材・高級な食材を沢山使っているということね。
GMおじさん
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まあ、そういうことだね。人間の食べる量には一定の限度が有るから、原材料費が高いということは料理の量が多くなるのではなくて原材料の質が高くなる、あるいは高級な食材を使っていると言えるよね。
GMおじさん
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だけど「原材料が高いほど料理が美味しい」と思い込んではいけないよ。例えば海外産の輸入食材を使えば必然的に原材料費が上るけど、それじゃ海外産の輸入食材が美味しいかといえば必ずしもそうではないでしょう。単に珍しいとか、有名だというだけで金額が上っている食材も多いし、特に洋食(フレンチ)の調理人の場合は「海外産」の食材に弱いみたいだからね。
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以前に、おじさんの古い友人のご子息の結婚披露宴に招かれて行ったことがあってね。華やかな披露宴会場と豪華に飾った料理だったけど、全く美味しくなかったんだ。だけど、招かれたい以上は文句は言えないよね。そうしたら、新郎の親である友人が食後のデザートのシャーベットを食べてひとこと、「これが今日の料理で一番美味しかった」とポツリと言ったことがある。それを聞いて、新郎の父親が言うくらいだから、やっぱり美味しくなかったんだな、と思った記憶があるよ。
はなちゃん
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でもいい材料を使った方が美味しくなるんでしょう。レストランの方が原価率が高いから原価率が低い宴会料理より美味しいのは当然だし、高価な原材料を使った高原価の料理のほうが美味しくなるのよね。
GMおじさん
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それはそうだけど、高価な原材料を使うと料理の価格も上ってくるよね。殆どの人が高価な原材料を使った高価な料理ほど美味しいと思っているかもしれないけど、でも、それは間違っているんだよ。
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美味しいと感じるのは人それぞれだけど、少なくとも以下の要因が重なって人は料理を美味しいと思うんだよ。
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まず、原材料の新鮮さと素材が持つ味わい。次に原材料の原価率。さらに食材・料理の温度管理。そして料理の盛り付け、つまり見た目の美しさだね。最後に調味料の使い方や焼き加減、揚げ加減などを総合した料理人の腕前。同じ材料でも調理をする人で全く違った味わいになってしまうから、料理って奥が深いよね。
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さっき、高い料金の料理は高い材料を使っているから、原価率が低い安い料理より美味しいと言ってたけど、必ずしもそうではないんだよ。
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ちなみに友達の披露宴に招かれて、美味しいと思ったことはあるかい?
高級ではなくても記憶に残る美味しい料理はある
はなちゃん
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過去に3回ほど友達や親戚の披露宴で食事をしたけど、不味くはないんだけど絶対これは美味しい!と思ったことはないかも・・・
たろうくん
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僕も披露宴の食事で美味しいと思ったことは無いな~。キャビアやフォアグラなどの海外産高級食材を使っているし、見た目もキレイに盛り付けてあるけど・・・
GMおじさん
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二人が食べた披露宴の料理は多分1人前で12,000円から15,000円以上すると思うけど、記憶に残ったり感動するほどの味ではなかったということだね。
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でも二人とも、レストランで食事をすると美味しい料理に出会うことがあるだろう。
はなちゃん
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ある、ある。山下町にある「ムッシュービストロ」のビーフシチューは最高に美味しい!それに、お父さんに連れていってもらった「寿司錦」のにぎり寿司は本当に美味しかった。
たろうくん
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僕も会社の近くにある「中華料理 王」の料理長おすすめコースは絶対いち推しですね。実際にいつもお客さんが多くて、予約もなかなか取れないもんね。
GMおじさん
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今言った洋食、和食、中華のお店は特別の名店というわけではないのに、二人の記憶にしっかり残るほど美味しかったんだね。
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じゃ、披露宴の高価な料理は記憶に残らないのに、特別ではない一般のレストランの料理はなぜ美味しいと感じるのだろうか?
なはちゃん
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分からないわ。教えて、GMおじさん。
美味しい料理の絶対条件は「温度管理」にある
GMおじさん
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小さなレストランなのにお客様に美味しいと評価してもらえるのは、素材の新鮮さと料理人の腕前だと思うけど、決定的に大切なのは「出来立ての料理をすぐに提供」してくれることだと思うよ。
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温かい料理は温かいうちに食べる。冷たい料理は冷たいうちに食べる。当たり前のことだけど、それが料理には一番大事なことなんだ。そして、この当たり前のことを実行できるかどうかで、お店の評価は大きく変わってしまうんだ。
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一般的に、披露宴の料理は調理してからお客様の前に提供するまでに、どうしても時間が掛かってしまうんだ。料理を作る調理場は宴会場から離れているし、なにより50名とか80名とか、大人数の料理を作る時は皿を沢山並べてひとつづつ盛り付けていくから、ゲストのところに配膳されるときには既に温度が下がってしまっているよね。
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それに、ゲストは一人ひとり食事をするスピードが違うから、コース料理では同じ料理を提供するタイミングを一人ずつ変えなければいけないよね。そのため、当然ながらさらに温度監理が難しくなるよね。
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料理の温度対策としては、宴会場を持っているホテルなどではずいぶん前から「ウォーマー」と言って、料理を保温する設備を持っているところが多いんだ。もちろん料理を冷やしておく冷蔵設備はどこでも必ずあるよね。
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それでも、いくらウォーマーがあっても作りたての料理の風味を保つのは出来ないんだ。だから披露宴の料理には驚くような美味しい料理が少ないんだよ。
はなちゃん
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それなら温かい料理を最高の状態でいただくのは無理ということかしら?
GMおじさん
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調理をする人も色々と努力はしているけど、はっきり言って、もっと完璧に保温ができる「ウォーマー」が開発されない限り、披露宴でコース料理を食べるときはあきらめた方がいいと思うよ。
たろうくん
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何かいい方法は無いかな。せっかくお祝いに駆けつけてくれた方々には美味しい料理を食べてほしいからね。
GMおじさん
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解決法はあるんだよ。
はなちゃん
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えっ!!それ絶対教えて、おじさん!
GMおじさん
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解決法は料理の配膳方法と人数に合わせた料理の選び方にあるけど、これは次回に話すことにしようね。
はなちゃん・たろうくん
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わかった。次回もお話を聞くのが楽しみだわ。それじゃおじさん、またね。
ちょっと一息
高級食材の代表的なものに「キャビア」があります。世界3大珍味と言われるものの一つですが、価格は大変に高くて海外産の場合で100g当り15,000円~18,000円もします。国産キャビアになるとさらに高くて100g当り48,000円ほどしています。海外産のキャビアを5グラム(小さじ1杯程度)料理に使うだけで、原価が750円~900円上りますので料理金額も2,500円~3,000円ほど高くなります。「キャビア」の代用品として「ランプフィッシュキャビア」と言うものがあり、見た目は殆ど違わないのですがこちらは金額が100g当り1,300円程度と「キャビア」の10分の1以下になります。「キャビア」という言葉はもともと「魚卵」という意味ですので、料理に出てくるキャビアは案外代用品なのかもしれませんね。
まとめ
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業種・業態によって料理の原価率は決まっている。
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婚礼料理の原価率は25%~30%が一般的。但し、それ以下の宴会原価率20%~25%の場合もある。
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定められた原価率の中でいかに美味しい料理を作るかは料理人の腕前次第。
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食べる量には限度があるから、原価が高いということは高い材料又は高級な食材を使うということ。
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高価な原材料を使うと料理価格も上る。
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高い料理だから美味しいとは限らない。小さなレストランや名も無い食堂でも至極の料理がある。
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美味しい料理の要因は、原材料の新鮮さと素材が持つ味わい、原価率、温度管理、料理の見た目、料理人の味付け・火加減などの腕前。
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「温かい料理は温かく、冷たい料理は冷たく」は美味しい料理提供の基本。少人数なら可能だが大人数のコース料理では難しい。